最小の努力で最大の成果を生む本質的思考

「大事なものからやろう」「選択と集中」と聞いても、実践は簡単ではない気がします。意識すればできる、という話ではない気がしています。体質まで落とし込んではじめて実になる気がしています。『エッセンシャル思考』という本を読み、幾つかの側面を再確認して、体験に落とし込みたいと思い、文章で整理してみます。

トレードオフを意識する

気を付けないと、今手元にあるもの、目に付くもの全てを大事だ、全てこなさなくては、捉えてしまいます。しかし、何かを選択するということは、何かを選択しないということです。ある機会、成果を優先することで、ある機会、成果を失ってしまっていることを意識しないといけません。

「失われる機会、成果、価値」を意識しないと、「根性があれば、気合があれば、頑張れば何とかなる」と考えてしまいますし、反射的に目についたもの・依頼されたものから手を着ける癖が付いてしまいます。ただ現実は、そうもいきません。頑張ろう、全部やろう、と思っても、現実では全部が中途半端になってしまいます。

トレードオフを物凄く意識するのが大事です。みんなを優先するのは、みんなを優先しないのと同じなので、「何を優先しないか」という切り口で考え捨てるものを意識し、何かを選択するときに「この選択で別の機会、成果、価値を捨ててしまっている」と強く認識する。そうすることで、選択の仕方、選択の質が変わるはずです。

減らして価値を増やす

幾つかの選択肢が目の前にあれば、どれを実行しても効果が同じと考えてしまいがちです。インプットの量とアウトプットの量がイコールと考えてしまいがちです。しかし、現実はそうではありません。努力やインプットは単純な足し算で機能しません。同じリソース、時間を投入しても、より効果が出る選択肢、アクションというものがあります。努力の量が成果に比例するとは限らず。ある努力は他の努力よりも成果が高く、ある努力は他の努力よりも成果が低いのです。

パレートの法則とも通ずるところがあります。2割のアクションが全体の8割の効果を占めている可能性があるのです。価値や効果を増やしたいときに単純に「アクションを増やそう」と結論を導くのではなく、「することを減らしつつ、かつ価値を増やす」と観点を持つことが大切です。

今、本当に重要なことは何か、を考え抜き、今ある多くのTO DOを効率よくこなすのではなく、TO DOを削る、シンプルにする、という観点で考えてみます。

90点未満は全部捨てる、ほとんどがノイズである

ほぼ無意識に選択してしまうことがあります。何となく良さそうだから、あの人から勧められたから、皆やってるから、お願いされたから、など、それっぽい刺激があってあまり深く考えずに「すること」と判断して行動に移してしまいます。反射的に目についたもの、依頼されたものから手を着けてしまいがちです。

しかし、世の中の大半のものはノイズかもしれません。また、全てを受け入れることがプロフェッショナルの定義でもないです。プレッシャーに負けず断るのは難しいですが、勇気を出して「No」と言い、本質的なことを選ぶことが大切です。周囲に流されてしまいそうになるときこそ、重要なものに集中することが大切です。

“悪くない“選択肢は残してしまいがちですが、全て排除するマインドセットでいましょう。誰かに頼まれた、みんながやってる、など、消極的な基準は捨てます。厳格な基準を設け、絶対にYesと言えないなら、それはNoと捉え、90点以上のものだけ選びます。例えば採用では「この人が創業メンバーだとしても、違和感はないか」くらい考えないといけません。「しなければならない」と感じる場合も強い義務感ではなく受動性であれば捨てる、「したい」を大事にする必要があります。

既に持っているものは捨てづらいです。「授かり効果」という言葉もあり、人は既に持っているものをより高く評価し、捨てるのが怖くなってしまいます。いつもやっているからそれがいいと考えてしまいます。「全て実行しないといけない」「完璧じゃないとダメ」という完璧主義をを捨て、一回ゼロベースで考えてみます。「完璧を目指さずにまずは終わらせろ」を大切にします。徐々にやめてみて何が問題が起きないか見てみます(逆プロトタイピング)。自分が全てを完璧に実行しないといけない、というこだわり、エゴを殺します。より少なく、より良く、は可能です。削る勇気を持つことが大切です。

軸になる目標を設定する

ぶれないための軸が存在しないと、重要でないもの、目に入ったもの、簡単なもの・分かりやすいものに意識を引っ張られてしまいます。そこで軸となる目標、本質的な目標とそのクリアな言語化・外部化がキーになります。

「われわれは情熱、リーダーシップ、実行力、イノベーションを大切にします」「顧客、従業員、株主を大切にします」など、一般的で無個性、汎用的なステートメントは役に立たちません。響きの良いバズワードに囚われて、中身のない形式的な目標を設定すると人を動かすことが出来ません。定義が明確になっていない、言葉の意味の共通認識がないけど、よく使われる、それっぽい空虚な言葉やテーマは意外とよくあります。壮大な目標、それっぽい言葉は独り歩きしがちです。

しかし、本質的な目標は、具体的で刺激的、地に足が着いた言葉です。目標をわざわざ美しい言葉、かっこいい言葉する必要はありません。ときに地味で泥臭い、堅実で中身のある目標の方が人を動かすはずです。目標が明確でないとエネルギーが分散し、瑣末なことにエネルギーを投入してしまうので、軸になり、衝動を引き出す目標を設定するのが大切です。

考える時間を作る

重点志向は体質であり、体現が難しいです。心の底まで染み込んでやっと重要なものを重要なものとして動けるようなり、重要でないものにNoと言えるようになります。重要なものに集中するためには、一息ついて、考える時間を作る必要があります。今来たメールに返信してしまいそうになったり、聞いたばかりのチャンスに飛びついてしまいそうになったりすれば。周りを見渡して、深呼吸をします。

過去のことを考えず未来を頭の中に掲げず、今ここに集中します。今何が重要か、何を目指しているか、を常に明確にし、優先順位を付けられるように頭をクリアにします。脳のリソースを空けます。良質な睡眠を取り、マインドフルネスを実行し、自分と向き合う時間を作ります。日々の行動や思考を振り返って内省し書き出してみます。気を付けないと、体質まで変換してしまわないと、とにかく目の前のことに飛びついてしまうので、考える時間を作り、大局を忘れないような癖付けが大切です。

おわりに

以上が、「重点志向とは何か」を幾つかの側面で見たものです。日常では、今手元にあるもの、目に付くものに意識を向けてしまいがちです。全てを大事だ、全てこなさなくては、捉えてしまい、反射的に目についたもの、依頼されたものから手を着けてしまいがちです。何となく良さそうだから、あのひとから勧められたから、皆やってるから、お願いされたからと、ほぼ無意識に選択してしまうがちです。

しかし、大事なものは物凄く少ないです。その少ないものに意識、時間、労力を投資すれば、成果を最大にできるはずです。より少なく、より良くは可能なのです。そのためにも日々肩の力を抜いて大局観を持ち優先度を付け不要なものを排除する、それが意識できる工夫、癖付け、体質ができると、仕事や生活の質が良くなりそうです。

考慮すべき観点もあります。無駄ではないものを無駄と決めつけてしまう危険性、無駄そうなものを集めて想像以上に産物が生まれる可能性、とりあえず全てを受け入れて手を動かして失敗することで得られる景色、本質を見抜こうと時間と頭を使い過ぎて理論が先行してアクションを起こさない危険性など、エッセンシャルに考えて見落としてしまうかもしれませんが、それでも「最小の努力で最大の成果」を生む本質的思考の切り口を持っているのは大切かと思います。

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