抽象化とは、捉えづらい概念かもしれない。その行為・思考プロセス自体が具体的でないから、明確に形や文章に落とし込みづらいということです。
形のない概念へ置き換える
抽象化の一つの説明は、「具体的な事象を形のない概念へ置き換える思考プロセス」である。例えば、今僕の目の前に綾鷹のペットボトルがある。これは綾鷹のペットボトルという概念ではなく、目の前にある、僕の目が認識している、実際の物体だ。
そしてこれを「緑茶」と呼ぶとする。そうすると、今目の前にある、形のある綾鷹のペットボトルから、他の様々な緑茶のカテゴリーに含まれる緑茶(おーいお茶、伊右衛門の緑茶、伊藤園の緑茶など)全ての個別のものである緑茶が含まれ、概念になる。この形のない概念に落とし込む思考の作業が抽象化である。
物事の構成要素から共通する事項や大事な部分を抜き出す(大事じゃない部分を捨てる)思考プロセス
「物事の構成要素から共通する事項を抜き出す思考プロセス」という側面もある。
例えば、緑茶という概念とコーヒーという概念。どちらも水分で、飲料。スポーツドリンクもそうだ。色や香りや値段や生産方法(近しい部分もあるかもですが)に注目するのではなく、飲料である側面に注目すると、どれも「飲み物」と括ることができる。つまり、ある共通項を引っ張り出し複数の物を一つの概念にグルーピングする、概念を高次に上げる、これも抽象化だ。
この「共通する事項を抜き出す」というプロセスは、(ある注目すべき要素に焦点を当てて)後は捨てる、という行為を行っているとも言える。(抽象の「抽」は(抽斗「ひきだし」の漢字にも使われている通り)、引っ張り出す、抜き取るという意味ですね。)
他の例を見てみよう。例えば、高橋さんがSNSである友人の服を見て「かっこいい」と思い、ブランドに興味が湧きインターネットで検索し、いくつかの商品をECサイトで購入した。田中さんはSNSで掃除機が気になり、高橋さんと同じような流れで掃除機を購入していた。東野さんは同じ流れでジムに入会していた。
対象の物、商品は異なるが、購入の流れに注目すると、共通項が見られる。「興味」「検索」「購入」のような概念で括ることができる。このとき、高橋さん・田中さん・東野さんの個人名や性格や身体的特徴や文化背景などのリアルな特徴は一旦無視してしまい、捨ててしまう。購入までの行動だけに商店を当てて、特徴を引っ張り出す。このように個別具体の特徴を捨てフロー・モデルのようなものを作るのも「抽象化」である。
なぜ抽象化が重要?
■構造化して全体像・目的が掴める
抽象化と目的・目指す姿や目指すものというのは密接に繋がっている。目的と手段の関係も、抽象と具体と関係と言い換えられる。具体ばかりを見ていると全体像を見失ってしまい、具体を達成することにだけ目が行ってしまう。なぜその具体策を行っているのか、なぜ今この行動・発言を行っているのか、これを考えると裏側には上位の概念が見つかるはず。構造が見えてくるはず。
■優先度が意識できる・付けられる
抽象化は重要項目に焦点を当てる作業でもあります。何が重要なのか、何が影響度が高いのか、何が緊急度が高いのか、という要素を引っ張り出してその要素を根拠にまず何に手をつけるか、次に何に手をつけるか(そして何に手をつけないか)が判断できます。仕事がたくさんある中でこの優先度を意識して判断できる(もしくは判断を仰ぐ)事が重要です。
■相手が本当にやりたいこと・言いたいことがわかる
発言(言葉)と意図(思考)には必ずずれがあります。言語化の精度は人それぞれですし、思考の幅(可能性を考えらる想像力・創造力)にも限界があるので、必ずしもやりたいことをうまく表現できる訳ではありません。そこで相手の発言や背景情報から「この人は発言ではこう言っているけど本当は何が言いたいのか?」「言葉の意味はわかるけどやりたいことは違うのではないか?」と相手の思考・思惑・意図(それが潜在的なものであっても)を引き出す事ができます。この「要するに」「それはつまり」「一言で」を引き出すのも抽象化の賜物だと思っています。
抽象化とは、具体的な事象を形のない概念に変換する、共通する項目を抜き出す、ある注目すべき要素に焦点を当てる、思考プロセスです。そして、抽象と具体を行き来する能力は仕事にどの局面においても最強の思考力となるはずです。ぜひ、抽象化を意識してみてください。
以上、抽象化とは?でした。
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