抽象化とはわかりにくい、捉えづらいという意味でも使われます。捉えづらいのは当然で、なぜならその時々に応じた正しい粒度・抽象度というものが存在し、相対的に変化するからです。
抽象度・具体度を指す言葉として使われる、「粒度」という言葉をまずは見てみましょう。
「粒度」とは?
「粒度」とは、簡単に言うと粒の大きさです。粉状や粒状、塊状の物体の粒子の大きさのことです。(砂石とか砂糖とかイメージしやすいなと思いました。)
そして、その粒子の大きさがビジネスでも比喩的に使われています。組織、データ、管理、タスク、施策など、様々なビジネス関連のあれこれで使われます。「粒度が高い(低い)」「粒度が小さい(大きい)」「粒度が荒い(細かい)」「粒度が同じ(違う)」とように使われます。
さらに、粒度というのは、抽象度、と言い換える事ができます。
例えば、「資料を確認する」という作業項目に対して、「粒度が大きすぎる」と指摘をもらったとします。この場合「資料を確認する」とはどのような意味でしょうか?
もしかしたら、「文章の誤字脱字を確認し修正提案を出す」という意味かもしれません。
もしかしたら、「語彙がガイドラインに合った表記かを確認し修正提案を出す」という意味かもしれません。
もしかしたら、「資料に記載されている情報が事実か確認し修正提案を出す」という意味かもしれません。
もしかしたら、「果たしたい目的に対して資料の設計が適切か確認し修正提案を出す」という意味かもしれません。
粒度の大きい(高い)・小さい(低い)は相対的です。その時々に応じて大きいの意味が変わります。「粒度が大きすぎる」という事は抽象度が高すぎて意味が曖昧だ、「確認する」という概念に対して様々な具体的な行動がありえる、という事です。この粒度に関する認識のずれがあると、「あれ、確認しておいてって言ったよね」「はい、確認しましたけど」という意思疎通のずれが起きます。「確認する」という概念が大きすぎるので、認識が一致しないとこのようなずれが起きます。
メッシュをどれくらいの遠さ・近さで見るかの違いです。
そして、内在的に粒度が高くなりやすい言葉というのもあります。「管理」「戦略」「確認」などは、その単語単体では何を意味しているかよくわからないはずです。
「構造化」とは?
そして、粒度の大きさの比較を理解・検知する上で、「構造」という概念が大切です。
「構造化」は、「抽象化」と同じ似たような意味でよく使われますが、私は構造化は抽象化の一部だと考えています。そして、構造化とは概念の繋がりを見つけるという事だと思っています。繋がりというのは縦の繋がり(高次元)と横の繋がり(同次元)です。この繋がりの認識して組織化する・立体化するのが構造化です。
例えば、電子機器、家電製品、掃除機、Balmuda the Cleaner、という概念の羅列があるとします。これは粒度が同じでしょうか、同じでないでしょうか。
(この時点では明確では無いとも言えますが、)「概念の抽象度」という軸で構造を加えるとすると、一番上に電子機器、2つ目に家電製品、3つ目に掃除機、4つ目にBalmuda the Cleanerを配置する事ができます。その他の概念と一緒に構造を整理すると、具体概念が上に行くにつれて少なくなるはずなので、ピラミッドの形になるはずです。
構造化というのは、この軸を与えて関係性を明示して分類・整理してピラミッドを作ることを言います。軸を与えるのが全体の整理、分類が関係性の整理です。
構造化が適切にできる(目的や環境を理解した上での全体像の理解とロジカルな繋がりの特定)と、
メリットは、全体像の把握しやすい、原因・解決策の把握しやすい、漏れダブりの把握しやすい、認識の合意がとれやすい、などあります。
ただ、もっと抽象的な思考力というの身につき、全ての認知に置いて「本質は?」「目的は?」と上位の概念を認識できるはずです。ですので、構造化を日々鍛錬すると素晴らしい思考力になって仕事のアウトプットの質が向上するはずです。
抽象度とは相対的である、というは要注意です。
先程粒度が同じかどうか、という質問をしましたが、この粒度(抽象度)は相対的なので、その時に応じて適切な粒度というのが必ず有り、一般的に絶対にこれが正しいという分類や構造化は無いはずです。(一般論ではなく)具体の事象・環境と照らし合わせて適切な構造化・抽象化があるはずです。(例えば、データが溜まっていないからナレッジを一元管理したい、と言った場合その課題と対策って一般論過ぎてデータが溜まってて何が困るのか、一元管理すると本当に解決するのか、が見えづらくいです。一般的には良さそうな話ですが、本当に今の現状や目的に適切化を判断しないといけません。)
これは注意点だと思います。
どうしたら構造化力がつくか?
私も定期的に何かしらしようとは思っているのですが、言語化・図式化してみるのが良いと思っています。言語化・図式化しようと思うと(単純な散文・図式の羅列でなければ)どこに焦点を置きたいか、どのように認識を合わせたいかに応じて構造化せざるを得ないです。文章に小見出しを付けるのも構造化の一つです。図式化しようとすると構造化(関係の整理)をせざるを得なくなります。文章を書くのもスライドで表現するのも良い訓練だと思います。
今回は概念だけを例に使いましたが、事象の話をして因果関係や相関関係を整理するのも構造化の一つの成果です。目には見えにくいですが、非常に重要なスキルだと思います。
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